入社前研修の必要性や目的、実施時のポイントを解説

新卒採用した内定者は、内定承諾から入社までの期間に不安を感じたり、モチベーションが下がってしまうことも珍しくありません。

このような理由からの内定辞退を防止するためにも、入社前研修は効果的といえます。

本記事では、入社前研修の「概要」や「メリット」「研修内容」などを解説します。

加えて、入社前研修を実施する際の「ポイント」や「注意点」もご紹介しますので、研修を成功させるための参考にしてください。

入社前研修の概要

入社前研修とは、内定者を対象として行う研修のことで、内定者研修と呼ばれることも多いです。

ここからは、入社前研修が必要な理由に加え、入社前研修の目的や実施時期について解説します。

入社前研修の実施を検討している企業担当者の方は、概要を理解しておきましょう。

入社前研修が必要な理由

新卒採用では、内定から入社までに半年ほどの期間が空くことが一般的で、この期間に不安を感じる学生も少なくありません。

実際に株式会社ディスコが行った調査では「内定期間中に不安を感じた」と回答した学生が9割を超えました。

調査データで⾒る「入社に向けた内定者フォロー」|株式会社ディスコ
画像引用元:【PDF】調査データで⾒る「入社に向けた内定者フォロー」|株式会社ディスコ

「学生から社会人へと立場や環境が変化すること」である上位3つの理由について、不安を感じる人が多いと分かります。

加えて、入社直前のアンケートでも、4割の学生が「入社後に企業で活躍できる自信がない」と回答しています。

このような調査結果から、企業は内定者が安心して入社できるよう、研修などを通して接点を持つ機会を提供する必要があるのです。

入社前研修の目的

入社前研修は、主に以下の目的から実施されます。

  • 内定辞退の防止
  • 入社前の不安払拭
  • ビジネススキルの習得
  • 社会人としての意識醸成
  • 同期や既存社員とのコミュニケーション

加えて、入社後に必要となる基礎的な業務スキルを身に付けさせるという目的もあるでしょう。

入社前研修では、同期との親交を深めると同時に社会人としての意識改革も行えます。

また、会社と新入社員の間でイメージや認識をすり合わせられるため、入社後の早期離職の防止にも繋がりやすいです。

入社前研修の実施時期

入社前研修の実施時期は企業によって異なりますが、10月の内定式後と2〜3月の入社前に行われることが多いです。

研修内容は、実施時期に合わせて設定することをおすすめします。

内定式直後の10月に行う研修では、既存社員や他の内定者とのコミュニケーションを重視した内容にすることで、内定者の不安を払拭します。

入社が間近に迫った2〜3月の研修では、業務に使うスキルの習得や実践的な研修を行うと良いでしょう。

時期によって研修内容を変えることで、段階的に社会人としての意識を持つことができ、より効果の高い研修を行えます。

入社前研修を実施するメリット

入社前に研修を行うことは、企業と内定者の双方にとって多くのメリットをもたらします。

  • 内定辞退を防止できる
  • 社員が入社後スムーズに業務や仕事に取り組める
  • 入社後のギャップを減らし定着率を向上させる

それぞれ詳しく解説しますので、入社前研修を行う際の参考にしてください。

内定辞退を防止できる

入社前研修を行うことで、内定者の不安を払拭し、内定辞退を防止できます。

内定者の中には、入社までに「本当にこの会社でよかったのか?」「自分に合っているか分からない…」などの不安を抱えてしまう人も多いです。

また、内定承諾から入社までの期間に企業との接点がないと、入社意欲が落ちて他の内定先を選んでしまう可能性もあります。

内定者の入社意志やモチベーションを保つためにも、入社前研修は非常に効果的といえます。

社員が入社後スムーズに業務や仕事に取り組める

入社前研修の実施により、入社後の仕事がスムーズに進められるというメリットもあります。

内定者の段階からOAスキルを身に付けたり、業務に必要な知識を習得させることで、入社後の早期活躍が期待できるでしょう。

また、社会人としての意識を向上させることで、内定者のモチベーションアップにも繋がります。

基本的なビジネスマナーを知らなかったり、学生気分のまま入社してしまうと、配属先の教育担当者に大きな負担がかかります。

そのため、入社前研修で「社会人としての土台作り」をしておくことが大切です。

入社後のギャップを減らし定着率を向上させる

入社後のギャップを減らし、定着率を向上させるためにも、入社前研修は効果的です。

新卒で入社した社員が早期に離職する現象は「3年3割問題」ともいわれ、多くの企業にとって課題となっています。

厚生労働省の調査によると、令和2年3月卒業の大卒者のうち、32.3%の人が就職後3年以内に離職していると発表されています。

早期離職の理由は様々ですが「入社してみたらイメージと違った」という入社後ギャップが挙げられるケースが多いです。

入社前の段階で、企業の情報や職場環境を知ってもらい、入社後の具体的なイメージを抱かせることで、早期離職のリスクを減らせるでしょう。

参考:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します

入社前研修で学ぶテーマ・内容

入社前研修には、主に以下のような内容が含まれます。

  • ビジネスマナー
  • 企業・業界・業務知識
  • 基本的なITリテラシー

効果的な研修を実施するには、自社の目的に合った研修カリキュラムを作成しましょう。

ビジネスマナー

ビジネスマナー研修は、入社前研修で取り入れられる代表的な内容です。

挨拶やメールの書き方、電話対応、名刺交換の仕方など、社会人として必要なマナーを習得できます。

入社前にビジネスマナーを学習することで、入社後スムーズに業務に取り組むことが可能です。

「社会人としての意識」が自然と身に付き、内定者1人ひとりが社内外から信頼されるビジネスパーソンへと成長できるでしょう。

企業・業界・業務知識

自社の歴史や理念、業界の特徴、業務に関する知識などを研修内容に組み込むこともおすすめです。

社内見学や工場見学の時間を設けて会社施設の紹介をしたり、社内報を配布するなど、口頭での説明だけでなく目で見て体感できる研修を行うと良いでしょう。

入社する企業がどのような業界にいて、どのようなビジョンを持っているのかを知ることで、モチベーションを維持できたり帰属意識を高められます。

このような会社概要の説明は、企業へ対する理解を深めるためにも必須といえます。

基本的なITリテラシー

ITリテラシー研修には、以下の内容が含まれます。

  • ExcelやWord、PowerPointなどのOAスキル
  • 情報漏洩などの情報セキュリティ
  • SNSの適切な使用方法

業務効率化を図るには、社員が正しく安全にIT機器を活用して業務を行う必要があります。

また、ITリテラシー研修を通してセキュリティに関する知識を学ぶことで、サイバー攻撃やフィッシング詐欺などによるセキュリティトラブルを未然に防ぐことが可能です。

SNSによる炎上リスクを防げるという効果もあるため、ITリテラシー研修は積極的に取り入れるべき内容といえるでしょう。

ITリテラシー研修について、もっと詳しく知りたいという方は、以下の記事をご覧ください。

入社前研修の受講形式

入社前研修には、様々な形式があります。

  • 集合研修
  • オンライン研修
  • eラーニング

それぞれのメリットやデメリットを理解し、自社にとってメリットの大きい研修スタイルを採用しましょう。

集合研修

集合研修は、全員が同じ時間・同じ場所へ集まって行う研修形式です。

内定者が会社の雰囲気を掴みやすく、同期や先輩社員とコミュニケーションを取ることによって、モチベーションアップにも繋がりやすいというメリットがあります。

他の社員と交流しながら研修を進められるため、グループワークやロールプレイングに適しています。

ただし、内定者の居住地にばらつきがある場合は集合が難しかったり、研修会場の確保や参加者の移動費などのコスト面で負荷がかかる可能性があるでしょう。

また、全員のスケジュールを合わせなければならないため、早めの段取りや日程連絡が必要です。

オンライン研修

オンライン研修は、ZoomなどのWeb会議システムを利用した方法で、集合研修のオンライン版のようなイメージが近いです。

参加者は、パソコンやタブレットなどの端末と通信環境さえあれば、場所を選ばず学習できます。

研修会場の手配も不要なため、対面型の集合研修と比較して、主催者と参加者の双方に負担が少ない研修スタイルといえます。

オンラインとはいえ、リアルタイムで学習を受けられるため、講師への質問がしやすかったり、参加者同士のグループワークも実施可能です。

オンライン研修は、メリットの多い一方で、通信トラブルがデメリットとなる可能性があります。

そのため、徹底した事前確認や、トラブルが起こった際に対応できる人員を用意しておくなどの対策が必要です。

以下の記事では、オンライン研修について詳しく解説していますので、ぜひチェックしてみてください。

eラーニング

eラーニングは、動画教材やテキスト等を利用し、Webサイト上で自己学習を進める方法です。

場所や時間に制限がなく、自分のペースで学べるため、アルバイトや行事などで多忙な学生でも隙間時間に無理なく学習を進められます。

また、何度も繰り返し視聴できるという特徴から、予習や復習にも有効といえるでしょう。

企業側にとってのメリットは、受講者1人ひとりの進捗状況管理や確認が容易となり、適切なフォローができる点です。

一方で、受講者の意欲によって学習が完了するかどうかが左右されたり、学んだスキルが本当に身に付いているのか判断しづらいというデメリットもあります。

定期的に面談を行ったり、テストを実施するなど、eラーニングだけで学習を終わらせない工夫が必要です。

入社前研修を実施する際のポイント

ここからは、入社前研修を実施する際のポイントを紹介します。

  • 研修の目的と目標を明確にする
  • 内定者のニーズも内容に含める
  • 参加者のスケジュールを考慮する

それぞれ詳しく解説しますので、ポイントを押さえて効果の高い入社前研修を実施しましょう。

 研修の目的と目標を明確にする

入社前研修を成功させるためには、研修の目的と目標を明確にすることが大切です。

何のために入社前研修を行うのか」「研修終了後にどうなっていて欲しいのか」など、目的と目標を定めることで、研修内容や研修スタイルを適切なものに設計できます。

設定した目的や目標は、研修に関わる社員や関係者、内定者たちに共有しておくことで、研修中の意識統一が図れるでしょう。

反対に、目的や目標を定めずに進めると、研修を「実施したもののあまり効果が出なかった」という事態を招きかねません。

研修の目的や目標を明確化することは、効果的な研修を実施するための重要な要素といえます。

内定者のニーズも内容に含める

入社前研修を実施する際は、内定者の声を反映させた研修内容にすることも重要です。

内定者にヒアリングやアンケートを行い、ニーズの高い内容を研修に組み込むことで、内定者の疑問や不安の解消、モチベーションアップに繋がります。

例えば「社員との座談会」などは希望者が多いため、先輩社員の成功体験や失敗エピソードなどを内定者に伝えてもらう場を設けても良いでしょう。

内定者の希望を取り入れた研修内容にすることで、効果や満足度の高い入社前研修が行えます。

参加者のスケジュールを考慮する

入社前研修の参加者はあくまでも学生なため、学業の負担にならないよう配慮する必要があります。

内定者は、卒業を目前にして学校行事やサークルのイベント、プライベートの予定などで忙しく、スケジュールが埋まってしまうことも多いです。

そのため、研修スケジュールは早めに決定・伝達するよう心掛けましょう。

基本的なビジネスマナーやITリテラシーなどは、eラーニングやオンライン研修でも習得可能です。

忙しい学生のためには、時間や場所に捉われない実施方法を取り入れるなど、カリキュラム内容に応じて研修スタイルを使い分けることをおすすめします。

入社前研修の実施を検討している方は、以下の記事も参考にしてください。

入社前研修を実施する際の注意点

入社前研修を実施する際は、いくつかの注意点があります。

  • 研修の参加を新入社員に義務付けてはならない
  • 内容によっては賃金の支払い義務が発生する
  • 場合によっては労災の適用対象になる

それぞれの注意点をしっかりと理解した上で、研修を実施しましょう。

研修の参加を新入社員に義務付けてはならない

業務に必要な知識を習得するための研修であれば、労務の提供を命じているものとみなされます。

しかし内定者のうちは、まだ雇用契約の効力が発生していない状態のため、研修の内容によっては会社から一方的に受講を義務付けることはできません。

入社前研修は任意であるとして、強制はせずに内定者の同意を得る必要があります。

ただし、同意を得た任意の研修であっても、一定の時間や特定の場所に集合が必要で、内定者が拘束される場合は、賃金や手当の支払い義務が生じるため注意しましょう。

賃金の支払い義務については、次で詳しく解説します。

内容によっては賃金の支払い義務が発生する

入社前研修における賃金支払いが必要か否かは「参加に強制力があるかどうか」で判断されます。

会社の指揮命令により、研修の受講が義務付けられている場合は、賃金の支払い義務が発生します。

自由参加であっても、以下の場合は事実上の強制参加とみなされるため、賃金の支払いが必要です。

  • 業務に必要なスキルを習得するための内容
  • 不参加者に対する不利益が生じる場合

反対に、参加が任意で懇親会のような内容の研修である場合は、賃金を支払う必要はありません。

賃金支払いが必要な入社前研修を行う際は「内定者の初任給」か「地域別最低賃金」をベースにして賃金額を算出しましょう。

場合によっては労災の適用対象になる

入社前研修の参加者が労災保険の適用対象になるかどうかは「労働者」に該当しているか否かがポイントになります。

以下3つの要件を満たしている場合は、入社前の内定者であっても労災保険の適用を受けることが可能です。

  • 支払われる賃金が一般の労働者並みの賃金であり、少なくとも最低賃金を上回っていること
  • 実際の研修内容が入社後に従事する本来の業務と関連していること
  • 使用者の指揮命令のもと契約上の義務として行われている研修であること

労災保険が適用になる・ならないに関係なく、労働災害が起こらないよう、安全配慮措置を十分に行った上で研修を実施しましょう。

入社前研修ならウズカレBizへご相談を!

入社前の内定者は不安を感じやすいため、入社前研修の実施は非常に効果的といえます。

入社前研修を行う際のポイントや注意点を理解することで、自社と内定者の双方にとってより良い研修を実施できるでしょう。

弊社UZUZが提供する「ウズカレBiz」は、新入社員向けのIT研修サービスです。

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この記事を監修した人

S.KAWABATA  株式会社UZUZ COLLEGE 代表取締役

UZUZ COLLEGE代表取締役社長、UZUZグループ専務取締役。1986年生まれ、鹿児島出身。高校卒業後、九州大学にて機械航空工学を専攻。大学卒業後、住宅設備メーカーINAX(現・LIXIL)に入社。1年目からキッチン・洗面化粧台の商品開発に携わるも、3年目に製造部へ異動し、毎日ロボットと作業スピードを競い合う日々を送る。高校の同級生であったUZUZ創業者からの誘いと、自身のキャリアチェンジのため、「UZUZ」立ち上げに参画。第二新卒・既卒・フリーターといった20代若者への就業支援実績は累計2,000名を超える。2020年より教育研修事業を立ち上げ、2024年より「UZUZ COLLEGE」として分社化し、代表取締役社長に就任。