AI人材の育成は、企業の競争力を左右する重要な取り組みです。
とはいえ「どこから着手すべきか分からない」「どのようなスキルを身に付けさせればいいのか」と悩む企業も少なくありません。
育成を成功させるには、明確な目的設定と、継続的に支援できる体制づくりが求められます。
本記事では、AI人材を育成するための5つのステップと、成功のために押さえておきたい実践的なポイントを解説します。
自社でAI人材を育てたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
日本リスキリングコンソーシアムの「AI人材育成白書」によると、AI人材に求められるのは、技術的スキルだけではありません。
AIリテラシーの高さや、幅広い理解力の重要性が強調されています。
生成AIに必要とされているスキルとは、技術的なことばかりでなく、AIリテラシーの高さや理解の広さが重要と考えられます。企業が持つ経営課題や業務課題を解決するひとつの手段として、生成AIの導入や活用を促進し、企業のビジネス拡大や継続的な成長に貢献できる人材が、AI人材として求められているのです。本書において「AI人材」とは技術者や開発スキルを有するスペシャリストではなく、AI(生成AIを含む)を活用し業務において具体的な成果を上げることができる人材を指すものとします。
引用:日本リスキリングコンソーシアム:「AI人材育成白書」P9
この定義に基づくと、企業がこれから育成すべきAI人材は、AI(Artificial Intelligence:人工知能※1)を開発できる「エンジニア」だけではありません。
今後は、AIを業務に活用し、業務改善や意思決定、事業価値の向上に貢献できる「AIを使える人材」がますます重要になります。
つまり、AIを活用して「ビジネスで成果を出せる人材」を社内で育てていくことが、企業にとって最優先の取り組みだといえるでしょう。
※1:人間の知的な働き(考える・学ぶ・判断する)をコンピュータに再現させる技術
AI技術の進化は、企業の競争力にも大きな影響を与えています。
AI人材の採用は年々難しくなっており、外部からの確保には限界があります。
そのため、自社内でAI人材を育成し、スキルを高めていくことが不可欠です。
ここでは、企業がAI人材育成に早急に取り組むべき理由を、2つの視点から紹介します。
AI人材の確保は、企業にとって深刻な課題となっています。
AI技術の進化に伴い、生産性の向上や新サービスの開発が求められる一方で、必要なスキルを持つ人材の供給が追いついていません。
中でも、深層学習(ディープラーニング)やビッグデータ解析などの専門知識を持つ人材は限られており、採用競争は厳しさを増しています。
特に中小企業は、大企業との採用競争で不利になりやすく、採用できたとしても十分な教育体制を整える前に離職されてしまうケースも少なくありません。
さらに、経済産業省の調査によると、2030年には最大で約14.5万人のAI人材が不足すると見込まれています。
このような背景から、外部から即戦力を確保することは簡単ではなく、自社内での人材育成が現実的な選択肢といえるでしょう。
採用ではなく育成に軸足を移すことが、企業の持続的な競争力に繋がります。
参考:経済産業省「- IT 人材需給に関する調査 - 調査報告書」
日本では少子高齢化が進み、労働力の確保が年々難しくなってきました。
総務省の「令和4年版 情報通信白書」によると、15〜64歳の生産年齢人口は1995年を境に減少し続けており、今後もその傾向が続くと予測されています。
こうした影響を受け、企業は人材不足という深刻な課題に直面しており、限られた人材をいかに有効活用するかが経営上の大きな課題となっています。
そこで注目されるのが、業務の効率化や自動化の取り組みです。
AIを導入することで、定型業務やルーティン作業を任せることができ、従業員はより付加価値の高い仕事に専念できます。
限られた人手でも成果を最大化する上で、AIは今後ますます重要な役割を担う存在となるでしょう。
参考:総務省「令和4年版 情報通信白書|生産年齢人口の減少」
AI人材を育成することは、単なるスキル向上に留まらず、企業全体の競争力を高める上で重要な戦略です。
社内にAIを使いこなせる人材が増えることで、業務の効率化だけでなく、新たな価値やサービスの創出にも繋がります。
ここでは、AI人材育成が企業にもたらす具体的な効果とメリットを、2つの視点から見ていきましょう。
AIは、単なる自動化のためのツールに留まらず、データに基づく意思決定を支える強力な手段でもあります。
特に、大量のデータを迅速かつ正確に分析する力は、企業が競争力優位を築く上で不可欠です。
社内にAI人材がいれば、データの統合管理から分析モデルの構築、さらには経営層への提言までの一貫した対応が可能になります。
これにより、属人的な判断に頼るのではなく、客観性と再現性のある意思決定を行える体制が整います。
データドリブン経営を推進することで、市場の変化にも柔軟に対応できるようになり、企業の持続的な成長を実現しやすくなるでしょう。
人的資本経営では、従業員を「企業の最も重要な資本」と捉え、その成長を支援することが企業価値の向上に繋がるとされています。
一人ひとりのスキル向上や成長の機会を提供することは、競争力の強化やイノベーション創出の土台づくりにも有効です。
特に、技術の進化が速い現代では、アップスキリング(既存スキルの強化)やリスキリング(新たなスキルの習得)を継続的に推進する必要があります。
AIを活用できる人材を育成すれば、従業員は変化の激しい技術や市場環境にも柔軟に対応できるようになります。
従業員の学びを後押しすることで、会社全体の成長にも繋がるでしょう。
AI人材に求められるスキルは、単に高度な技術力だけではありません。
AIを業務に活用して成果を生み出すには、現場での課題を理解して価値を生み出す力も必要です。
ここでは、AI人材に必要な「テクニカルスキル」と「ビジネススキル」について詳しく解説します。
テクニカルスキルは、AIを活用するための土台となる重要なスキルです。
AIモデルの設計や分析業務を担うには、プログラミングの知識をはじめ、機械学習や深層学習といった専門的な理解が欠かせません。
ここでは、AI人材に求められる代表的なテクニカルスキルを深掘りしていきます。
AIの開発において、プログラミングスキルは欠かせません。
中でもPythonは、AI開発に広く使われており、機械学習やデータ分析を効率的に行うためのライブラリが充実しています。
例えば、ECサイトではPythonを活用し、顧客の購買パターンを分析するアルゴリズムを構築することで、売上の向上に繋げることが可能です。
プログラミングスキルを習得することで、AI技術の開発や検証を行えるようになり、企業におけるAI活用を推進する実行力が身に付きます。
AI人材には、機械学習や深層学習に関する理解も求められます。
機械学習とは、AIに大量のデータを学ばせることで、そこからパターンを見つけ出し、予測や分類といった判断を自動化する技術です。
深層学習はその中でも、画像や音声といった複雑なデータを処理するのに適した手法で、より高度な認識や解析が可能です。
これらの知識を持つAI人材がいることで、データを最大限に活用し、課題の解決や新たな価値の創出に繋げられます。
AI人材にとって、データサイエンスの知識も欠かせない要素の1つです。
データサイエンスとは、統計学・情報工学・アルゴリズムといった専門知識を活用し、膨大なデータから有用な示唆(インサイト)を導き出してビジネスに活かす技術です。
単にデータを分析するだけでなく、得られた結果をどう解釈し、業務や意思決定に結びつけていくかを考える力も求められます。
特に統計学や数学の知識は、AIのアルゴリズムを正しく理解し、パフォーマンスを最適化する上で不可欠です。
AI人材に求められるのは、テクニカルスキルだけではありません。
現場の課題を正しく把握し、解決策を導くためには、ビジネススキルも欠かせない要素です。
ここでは、AI人材が身に付けておきたいビジネススキルについて解説します。
AI人材には、現場のビジネス課題を正しく理解し、解決に導く力が欠かせません。
AIの導入は、単なる技術活用ではなく「どの課題にどのように活かすか」という視点が求められます。
課題解決スキルを備えることで、直面する業務上の問題を見極め、AIによる効果的な改善策を提案することが可能です。
また、この力は論理的思考力とも深く関係しています。
道筋を立てて物事を捉える思考力があれば、AIの活用がより現実的で実行可能なものとなり、ビジネスにおける成果に結びつけやすくなります。
AI人材には、プロジェクトを円滑に進行させるマネジメント能力も欠かせません。
関係者との調整や全体の進行管理など、プロジェクト全体を見渡す視点が求められます。
AI関連のプロジェクトでは、開発チームだけでなく、他部門や経営層との連携が必要になる場面が少なくありません。
そのため、リソースの最適化やスケジュール調整、課題への優先順位付けなど、俯瞰的にプロジェクト全体を見渡す力が重要です。
こうしたマネジメント力を備えたAI人材は、現場と経営を繋ぐ橋渡し役としても活躍できるでしょう。
AI技術の進化に伴い、自社でAI人材を育成する重要性がますます高まっています。
育成において大切なのは、実際の業務で活用できるスキルを身に付けさせることです。
AI人材を育成する方法としては、以下のような手段が挙げられます。
それぞれの特徴やメリットを詳しく見ていきましょう。
AI人材の育成方法の1つに「社内教育」があります。
この方法の大きなメリットは、自社の業務や課題に直結したスキルを効率よく身に付けられる点にあります。
特に、既存の従業員に対してリスキリングの機会を提供することで、企業の方針や組織文化を理解した人材をAI人材へと育成できるのは大きな利点です。
効果的な社内教育を実施するには、初級・中級・上級といったスキルレベルに応じたカリキュラムを整備することが重要です。
座学だけでなく社内プロジェクトへの参加やOJTを組み合わせることで、より実践的なスキルが定着します。
また、社内で育成したAI人材を講師役として活用すれば、ナレッジ共有や学習文化の定着も期待できます。
AI技術は常に進化し続けているため、社員が自ら学び続ける姿勢が求められます。
企業としては、従業員の自己学習を支援するために、オンライン学習プラットフォームの導入や、学習費用の補助制度を整えることが効果的です。
こうした環境を整えることで、最新技術を自主的に学び、企業全体のスキルレベルの底上げにも繋がります。
加えて、定期的に社内勉強会を開催すれば、知識や経験の共有が活発になり、学ぶ意欲を高める機会にもなります。
自己学習を支える体制が整うことで、技術面だけでなくマインド面でも成長し、実務でAIを活用できる人材として活躍できるでしょう。
外部研修は、従業員が短期間で実践的なAIスキルを習得するための効果的な手段です。
社外の専門家から最新の知識やノウハウを学ぶことで、業務に活かせるスキルを効率よく身に付けられます。
また、講師や他の受講生との交流を通じて、新たな視点や刺激を得られる点も大きなメリットです。
こうした経験は、社員の成長を後押しし、新しいアイデアやアプローチをもたらす可能性を広げてくれます。
外部研修の学びを現場で活かすには、受講後の実践を見据えた仕組みづくりが不可欠です。
学んだ内容を業務に結びつけ、成果として還元できる環境を整えることで、外部研修の効果を最大限に引き出せます。
AI人材の育成を効果的に進めるには、目的を明確にし、段階的かつ計画的に実行することが重要です。
ここでは、AI人材育成を成功に導くための5つのステップを紹介します。
これらのステップを押さえることで、AI人材育成をより実践的かつ効果的に進められます。
AI人材の育成を始めるにあたって、まず「自社でAIをどのように活用したいのか」という目的を明確にすることが重要です。
活用目的を具体的に定めることで、必要となるスキルや人材像が明確になります。
求められる人材のタイプも、AIエンジニアやデータアナリスト、あるいはビジネスとAIを繋ぐ橋渡し役など、目的によって異なります。
育成の方向性を見誤らないためにも「なぜ自社にAI人材が必要なのか」を明らかにすることが、育成成功への第一歩です。
AI人材を効果的に育成するには、適正のある人材を見極めることが不可欠です。
AIは単なるツールではなく、複雑な課題に対応しながら最適な解決策を導き出す力が求められる領域です。
そのため、論理的思考力や柔軟な発想が必要とされます。
AI人材に適しているのは、問題意識が高く、深い探求心を持つ人材です。
例えば、現場の業務課題に敏感で、自ら改善点を見つけ出そうとする姿勢を持っている人材は、AIを活用して新たな価値を生み出す素質があります。
適正のある人材を早期に見極め、適切に育成することが、AI活用の基盤を築くための土台となるでしょう。
AI人材に求められるスキルは、企業が目指すAI活用の方向性によって異なります。
そのため、自社の目的を明確にし、それに沿ったカリキュラムを設計することが重要です。
例えば、AI開発を目指す場合は、Pythonなどのプログラミングスキルや機械学習に関する知識が求められます。
一方で、業務へのAI導入や活用が目的であれば、業務の課題を発見する力やデータ分析・活用能力、さらにはAIの仕組みや応用方法に関する理解が必要です。
目的に応じた専門スキルが身に付くようなカリキュラムを整備することで、現場で実践的に活躍できる人材の育成に繋がります。
カリキュラムが整ったら、それを基に育成計画を実行に移します。
目的に沿った育成方法を選定し、計画的に進めることが重要です。
主な育成方法には、以下の3つがあります。
これらの特徴を踏まえて実行することで、より実践的で効果的な人材育成が可能になります。
AI人材を育成する上で重要なのが、習得した知識やスキルを実務に活かす機会を提供することです。
座学や研修で得た内容は、実際の業務で繰り返し使うことで定着し、応用力へと繋がります。
また、定期的なフィードバックの場を設けることで、現場での成果を振り返り、学びを深めるサイクルを構築できます。
学習時間の確保や教材の提供に加えて、実務を通じてスキルを定着させる仕組みを整えることが、実践力を育む上で欠かせません。
AI人材の育成を成功させるには、従業員個人の努力に委ねるのではなく、組織全体で継続的に支援する体制が不可欠です。
ここでは、企業がAI人材を効果的に育てるためのポイントと、注意すべき点について解説します。
AI技術は日々進化しているため、一度習得した知識やスキルも、時間の経過とともに通用しなくなる可能性があります。
そのため、従業員が継続的に学び続けられる環境づくりが、AI人材の育成に欠かせません。
学びを一過性で終わらせないためには、オンライン学習プラットフォームの導入や、書籍・講座に対する費用補助といった制度的な支援が有効です。
また、社内勉強会やナレッジ共有の場を設けることで、従業員同士の知識交換が活性化し、組織全体のスキルの底上げにも繋がります。
学んだ知識を実務に落とし込める仕組みを構築することで、学習のモチベーションを維持しやすくなり、スキルの定着と応用力の向上が期待できます。
AI人材の育成を効果的に進めるには、育成の過程を可視化し、社内全体で共有することが重要です。
育成状況が明確になることで、他部署から理解や支援を得やすくなり、部門を超えた連携体制の構築にも繋がります。
さらに、進捗や課題をオープンにすることで、失敗を前向きに捉えやすくなり、柔軟な改善が可能になる環境が整います。
また、成功事例を組織内で共有する仕組みを取り入れることで、従業員のモチベーション向上や、新たな発想を生む土台にもなるでしょう。
AI技術の急速な進展に伴い「必要なスキルを備えた人材がいない」「ノウハウがなく進め方が分からない」といった課題に、多くの企業が直面しています。

画像引用:日本リスキリングコンソーシアム「AI人材育成白書」
日本リスキリングコンソーシアムの「AI人材育成白書」によると「ノウハウがなく、どのように進めればいいか分からない」と回答した企業が約49%にのぼりました。
この結果から、AI人材の育成に関する知見の不足が、企業にとってボトルネックとなっていることが分かります。
こうした状況を打開する手段として有効なのが、外部研修の活用です。
外部の専門講師による研修では、AIを用いた課題解決に取り組むロールプレイングや、実務を想定したグループディスカッションなど、実践に近い学びが得られます。
特に、インプットだけでなくアウトプットを重視した研修は、現場での即戦力として活躍できる人材の育成に有効です。
社内にノウハウや教育体制が整っていない場合でも、外部研修を活用することで、短期間で実践的なスキルを身に付けられます。
AI人材の育成は、目的を明確にし、段階的かつ計画的に実行することが欠かせません。
ここで紹介したステップやポイントを参考に、自社に合った育成体制を整えていきましょう。
とはいえ「社内にノウハウがなく、どこから手をつければいいか分からない」と悩む方も多いのが現状です。
こうした課題を打開するには、外部研修の活用が有効です。
ウズカレBizでは、AI研修の実施だけでなく、その後3ヶ月の伴走支援を提供。
現場で直面する課題に寄り添いながら、実務での定着や業務効率化まで支援します。
「社内に育成ノウハウがない」
「研修後のフォローが不安」
このような課題をお持ちの方は、ぜひウズカレBizにご相談ください。

UZUZ COLLEGE代表取締役社長、UZUZグループ専務取締役。1986年生まれ、鹿児島出身。高校卒業後、九州大学にて機械航空工学を専攻。大学卒業後、住宅設備メーカーINAX(現・LIXIL)に入社。1年目からキッチン・洗面化粧台の商品開発に携わるも、3年目に製造部へ異動し、毎日ロボットと作業スピードを競い合う日々を送る。高校の同級生であったUZUZ創業者からの誘いと、自身のキャリアチェンジのため、「UZUZ」立ち上げに参画。第二新卒・既卒・フリーターといった20代若者への就業支援実績は累計2,000名を超える。2020年より教育研修事業を立ち上げ、2024年より「UZUZ COLLEGE」として分社化し、代表取締役社長に就任。