エンジニアの離職率はどのくらい?離職率を下げる方法も解説

IT技術の急速な進化に伴い、エンジニア不足に悩まされている企業も多いのではないでしょうか。

この問題を解消するには、エンジニアの離職率を低下させる取り組みが重要です。

本記事では「エンジニアの離職率」や「離職率が高まることによるデメリット」「転職率が高まる要因」などを解説します。

加えて「エンジニアの離職率を下げる具体的な方法」についても紹介しますので、企業の競争力を維持し、優秀なエンジニアを確保するためのヒントにしてください。

エンジニアの離職率はどれくらい?

厚生労働省の調査結果によると、IT業界(情報通信業)の平均離職率は約11.9%です。

令和4年 雇用動向調査結果

参考:厚生労働省「令和4年 雇用動向調査結果

この数値は、あくまで情報通信業界全体のものですが、エンジニアの離職率も同程度、もしくはこれ以下だと推定されます。

また、以下の図が示す通り、IT人材は年々不足しています。

IT人材育成の状況等について

参考:経済産業省「IT人材育成の状況等について

このような状況下で離職率が高まれば、企業の人手不足はさらに加速し、競争力や技術力に直接的なダメージを与えるでしょう。

そのため、企業は離職率を下げるための取り組みを強化する必要があります。

具体的には、働きやすい環境の整備やキャリアアップの支援、福利厚生の充実などが求められます。

エンジニアが長期に渡り安心して働ける職場を提供することで、企業の持続的な成長を支えることができるのです。

エンジニアの離職率が高くなることによる企業のデメリット

エンジニアの離職率が高まると、企業にとって様々なデメリットが生じます。

  • 採用・育成コストの増大
  • 既存社員の業務負担が増えることでの生産性の低下
  • 企業の技術力の低下
  • 企業のイメージダウン

それぞれ詳しく解説しますので、デメリットを理解し、社員が長く働きたくなる環境作りに取り組みましょう。

採用・育成コストの増大

エンジニアの離職率が高まると、企業は頻繁に新しい人材を確保しなければならず、採用コストが増大します。

具体的には、求人広告費、採用イベントの開催費用、面接対応にかかる人事担当者の人件費などが発生するでしょう。

また、新たに採用したエンジニアを戦力化するためには、研修や勉強会などを開催し、育成する必要があります。

離職者が増えると、採用コストに加え教育コストもかかることから、企業の財政が圧迫され、他の重要な投資に割く予算が減少する可能性があるのです。

既存社員の業務負担が増えることでの生産性の低下

エンジニアが離職すると、残された社員がその業務をカバーすることになるため、既存社員の業務負担が増加します。

長時間労働による疲労やストレスが蓄積することで、社員のモチベーションが低下し、結果的に企業全体の生産性や業務品質が低下する恐れがあるでしょう。

また、業務の効率や成果にも、悪影響を及ぼす可能性があります。

このような状況を防ぐためにも、離職率を低下させることは非常に重要です。

企業の技術力の低下

経験豊富なエンジニアの退職は、企業にとって貴重な知識とスキルの喪失を意味します。

専門知識を持った社員が退職することで、企業にノウハウが蓄積していかないため、新入社員への技術伝承が困難になるのです。

その結果、企業全体の技術力が低下し、プロジェクトの進行や新技術の導入が遅れる可能性があります。

また、市場での競争力が低下するリスクもあるでしょう。

企業が持続的な成長を実現するためには、エンジニアの定着率を高め、組織全体の技術力を継続的に向上させる取り組みが不可欠といえます。

企業のイメージダウン

社員の離職率が高い企業は、労働環境に対してマイナスなイメージを持たれやすいです。

特にIT業界では、求職者はホワイト企業かどうかを重視するため、離職率が高いと「働きやすい環境ではない」というイメージが定着しやすくなります。

このイメージが広まると、優秀な人材の獲得が難しくなり、企業の成長を妨げかねません。

長期的には、ブランド価値も低下し、市場での地位を維持することが難しくなる可能性もあるでしょう。

エンジニアの離職率・転職率が高まりやすい要因

エンジニアの離職率や転職率が高まる背景には、以下のような要因があります。

  • 技術力があればより好条件の転職を実現しやすい
  • ピラミッド構造に対する給料などの不満
  • 長時間労働などが原因の心身の疲労

企業はこれらの要因を理解し、適切な対策を講じることが求められます。

技術力があればより好条件の転職を実現しやすい

IT業界における人材不足は深刻化しており、技術力のあるエンジニアは引く手あまたの状態です。

経験豊富なエンジニアは即戦力として高く評価されるため、多くの企業から現状よりも高待遇でオファーされることが多く、転職が活発化します。

企業間で優秀なエンジニアの獲得競争が激化する中で、エンジニア自身もキャリアアップや報酬の向上を求めて積極的に転職を検討しているのです。

その結果、離職率が高まり、企業は優秀な人材の確保がますます困難になるでしょう。

ピラミッド構造に対する給料などの不満

SESの多重下請け構造

IT業界では、元請け企業がプロジェクトを受注し、その後、下請け企業に依頼するピラミッド構造が一般的です。

下請け企業から、さらに3次請け、4次請けへと仕事が流れていくことも珍しくありません。

この多層的な構造により、下請けになるほどマージンが取られ、エンジニアの給料が低くなる傾向にあるのです。

エンジニアは自分の労働や市場価値に見合った報酬を得られず、給料に対する不満が高まります。

このような不満が積み重なると、より良い条件を求めて転職を考えるエンジニアが増えるため、企業の離職率が上昇します。

以下の記事では、SES企業の離職率について解説していますので、こちらも参考にしてください。

長時間労働などが原因の心身の疲労

厚生労働省の調査結果によると「過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者又は退職した労働者がいた割合」は、情報通信業界が最多となっています。

令和4年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況

参考:厚生労働省「令和4年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況

メンタル不調者が多い理由は様々ですが、主に以下のような要因が挙げられます。

  • 人手不足による長時間労働
  • 多重タスクに追われることで余裕がなくなり、上司や同僚との人間関係が希薄になる
  • プロジェクトの失敗や納期のプレッシャーが常に付きまとう

これらの要因が、エンジニアの心身に負担をかけ、結果として離職率を高めているのです。

企業がエンジニアの離職率を低下させるためには、労働環境の改善やメンタルヘルスのサポートが欠かせません。

エンジニアの離職率を下げるための方法

ここからは、エンジニアの離職率を下げるための方法を解説します。

先ほど解説した「エンジニアの離職率が高まる要因」を踏まえ、企業は具体的な対策を講じることが大切です。

各社の事例を交えながら8つの取り組みを紹介しますので「自社の離職率を低下させたい」と考えている企業の方は、ぜひ参考にしてください。

テレワークやフレックスタイム制などの柔軟な働き方の導入

テレワークやフレックスタイム制の導入など、社員が仕事とプライベートを両立しやすい環境を整えることが重要です。

例えばメルカリでは、コアタイムなしのフレックス制を導入しており、社員は自分のライフスタイルに合わせて自由に働く時間を選ぶことができます。

柔軟な働き方を取り入れることで、社員の満足度や仕事への意欲が向上し、離職率の低下に寄与しています。

また、副業を認めることも効果的です。

社員が自分のやりたいことを制限されずに行える環境を提供することで、モチベーションの維持と多様なスキル獲得が促進されます。

参考:メルカリ「Benefits & Communication Support

労働時間の管理を行い長時間労働を防ぐ

過労は従業員のストレスを増加させ、離職率を高める大きな要因となります。

そのため、適切な労働時間の管理を行い、社員の働きすぎを防ぐことが重要です。

例えば、定期的な勤務時間のチェックや休憩時間の確保、過剰な残業の抑制などの施策を導入することで、社員の健康とバランスの取れた生活をサポートします。

これにより、社員のモチベーションや生産性が向上し、長期的な雇用の安定に繋がるでしょう。

企業が持続的に成長するためには、労働時間の適正管理が不可欠といえます。

社員目線での福利厚生の充実

退職金制度、家族手当、子育て支援制度、食事補助など、社員にとって魅力的な福利厚生を充実させることは、離職率を低下させる有効な手段です。

社員の目線で福利厚生を検討することが重要であり、どの制度を導入するかは社員にアンケートを取るのがおすすめです。

社員のニーズや希望を反映した福利厚生を提供することで、働きやすい環境を整え、社員の満足度や忠誠心を高めることができます。

結果として、定着率が向上し、企業全体の安定と成長を支えることに繋がります。

適正な評価と給与の見直し

エンジニアは、他の職種と比べて高い給与を得やすいです。

特に経験豊富なエンジニアは、現在の給与よりも高い金額で他社からオファーされることが多く、転職の動機となります。

そのため、業界の給与水準を定期的に確認し、自社の給与制度を見直すことが重要です。

適正な評価制度を導入し、社員の貢献度合いに応じた給与が支払われるようにすることで、社員のモチベーションを維持し、離職率を低下させることができます。

評価と給与が適正であれば、エンジニアは会社に対する信頼感と満足感を持ち続け、長期的に企業に貢献しようとする意欲が高まります。

入社後の育成施策に力を入れて早期離職を防ぐ

特にSES業界では、新人エンジニアの早期離職が多いことによる人材不足が顕著です。

知識不足の新人エンジニアに、十分な教育を行わないまま業務に従事させると、分からないことを相談できずに問題を抱え込んでしまいます。

疲弊した新人エンジニアは、最終的に早期離職するケースが頻発しているのです。

このような事態を防ぐためには、入社時の新人教育が非常に重要です。

弊社UZUZの提供するオンライン研修サービス「ウズカレBiz」は、主に新入社員向けのカリキュラムを用意しています。

ITの基礎知識やビジネスマナーはもちろん、専門的なスキルまで身に付けられるコースが揃っており、社員育成に最適です。

このような包括的な育成プログラムを導入することで、新入社員が自信を持って業務に取り組むことができ、早期離職を防ぐことができます。

スキルアップできるよう教育体制を充実させる

社員がスキルアップできる環境を提供することで、企業への貢献意欲を高め、離職を防ぐことができます。

具体的な取り組みとしては、定期的な社内研修やeラーニングツールの導入が効果的です。

これにより、社員は最新の技術や知識を継続的に習得できるようになります。

また、業務に関連する書籍の購入費用を補助することも、自己学習の促進やスキルアップに繋がります。

教育体制を充実させることで、社員は自身の成長を実感しやすくなり、企業への満足度が高まるでしょう。

社員が気軽にコミュニケーションをとれる環境を整備する

人間関係の繋がりが薄いと、社員は気軽に相談できず、働きにくさを感じやすくなります。

これが原因となり、離職率が高まることは多いです。

例えばサイボウズでは「仕事Bar」という社内コミュニケーションの活性化を目的とした場を提供しています。

仕事Barでは、社員が仕事について自由に語り合うことができ、さらに参加する社員の飲食費を補助しています。

このような取り組みにより、社員同士の距離が縮まり、気軽に相談や意見交換ができる環境が整備されているのです。

コミュニケーションを促進する環境整備は、社員の満足度を高め、離職率の低下に大いに貢献します。

参考:サイボウズ「ワークスタイル

自分の希望する業務に参加できる機会を提供する

業務内容が固定されていて、社員自身の思い描く業務に挑戦できないことも、離職の原因となります。

そのため企業は、社員が希望するキャリアに挑戦できる機会を提供することが重要です。

例えば、社内公募制度を活用することで、社員は自分の希望する業務に挑戦しやすくなります。

サイバーエージェントでは、希望する部署や職種への異動を申請できる「キャリチャレ」制度があり、自身のキャリアビジョンに沿った業務に携わることが可能です。

また、エンジニアの中には、自分から声を上げにくい人もいるため、社内のキャリアエージェントが個別に希望を聞くなどの工夫も行っています。

こうした取り組みにより、社員のモチベーションが高まることから、人材の長期的な定着が期待できます。

参考:サイバーエージェント「社員の挑戦を応援する社内異動制度「キャリチャレ」とは

エンジニア離職率:まとめ

本記事では、以下の内容について詳しく解説しました。

  • エンジニアの離職率はどれくらい?
  • エンジニアの離職率が高くなることによる企業のデメリット
  • エンジニアの離職率・転職率が高まりやすい要因
  • エンジニアの離職率を下げるための方法

エンジニアは、深刻な人材不足に直面しており、他業界と比べても離職率が高い傾向にあります。

そのため、企業はエンジニアの離職率が低下する取り組みを強化することが大切です。

繰り返しになりますが、弊社UZUZは「ウズカレBiz」というオンライン研修サービスを提供しています。

元々人材紹介会社として創業した弊社は、これまで多くのエンジニア育成に携わってきました。

その「教育ノウハウ」や「指導力」を活かした研修は、社員のスキルアップを促すだけでなく、就業後の離職率低下にも繋がっています。

実際に、ウズカレBizを受講したエンジニアの定着率は非常に高く、就業後6ヶ月以内に退職する割合は、わずか3%にも満たないことが実証されています。

離職率を下げる取り組みの一環としてウズカレBizを活用し、エンジニアのスキルアップと定着率の向上を目指しましょう。

この記事を監修した人

S.KAWABATA  株式会社UZUZ COLLEGE 代表取締役

UZUZ COLLEGE代表取締役社長、UZUZグループ専務取締役。1986年生まれ、鹿児島出身。高校卒業後、九州大学にて機械航空工学を専攻。大学卒業後、住宅設備メーカーINAX(現・LIXIL)に入社。1年目からキッチン・洗面化粧台の商品開発に携わるも、3年目に製造部へ異動し、毎日ロボットと作業スピードを競い合う日々を送る。高校の同級生であったUZUZ創業者からの誘いと、自身のキャリアチェンジのため、「UZUZ」立ち上げに参画。第二新卒・既卒・フリーターといった20代若者への就業支援実績は累計2,000名を超える。2020年より教育研修事業を立ち上げ、2024年より「UZUZ COLLEGE」として分社化し、代表取締役社長に就任。