SESエンジニアは未経験からでも挑戦しやすい分「離職率が高い」といわれていますが、その理由について正しく理解していますか?
本記事では、SES企業における離職率の現状やその原因を徹底解説し、具体的な対策方法もご紹介します。
SESエンジニアが離職する原因を理解できれば、安心して働ける環境作りに取り組むことができるでしょう。
そしてエンジニアの定着率が向上すれば、企業の成長へとつながります。
ぜひ本記事を読んで、離職率低下への第一歩を踏み出しましょう。
SES企業の離職率は、正式な公的調査はないものの、一般的に10〜30%といわれています。
特に中小企業やベンチャー企業は、大企業と比べて離職率が高い傾向です。
これは、研修制度や福利厚生が十分に整備されていないことが主な要因とされています。
特に研修制度が十分に整備されていないことは大きな問題といえるでしょう。
理由は「SESエンジニアが成長できない→成長できないから給料も上がらない→モチベーションが続かず離職してしまう」のような悪循環を生むからです。
SESエンジニアの離職率が高いと、企業にとっても成長や存続に大きな影響があるため、現在離職率の高さを課題に感じている企業は対策が急務といえます。
SES企業の離職率が高くなりやすい理由は、主に以下の5つです。
エンジニアの離職率を下げる対策を考えるには、まずこれらの理由を知ることが大切です。
以下、それぞれの理由について詳しく解説していきます。
SESエンジニアは、給料が上がりにくい構造となっています。
というのも、SESの仕事は「多重下請け構造」が一般的であり、クライアントからのプロジェクトが複数の会社を経由してエンジニアに渡ります。
この過程で、間の会社に取られるマージンが大きく、結果としてエンジニアの給料が上がりにくくなっているのです。
特に、中小企業やベンチャー企業ではこの傾向が顕著で、エンジニアが感じる不満の一因となっています。
さらに、多くのSES企業では評価制度が明確化されていません。
評価が明確でないため、エンジニアがプロジェクトに多大な貢献をしても、残念ながら努力や成果が給料に反映されにくい状況が続いています。
これにより、エンジニアは「自分の仕事が正当に評価されていない」と感じ、離職を招いているのです。
SES業界では、エンジニアのモチベーション維持も大きな課題となっています。
その理由の一つは、エンジニアが単純作業しか任されないことです。
先ほど「SESは多重下請け構造が一般的である」とお伝えしましたが、下流側に位置するSESは、単純作業を依頼されることも多いです。
しかし、スキルアップを目指しているエンジニアにとって、単調作業の繰り返しは成長の機会を奪うものであり、仕事への意欲を失う要因となります。
また、経験の浅いSESエンジニアはスキルがない分、参画できる案件が限られ、スキルのない時期は希望案件に配属されにくいこともモチベーションが低下する一因です。
もちろんスキルアップすれば選択肢は増えますが、自分の興味やスキルに合ったプロジェクトになかなか参加できず、挫折してしまうエンジニアは珍しくありません。
SESエンジニアはしばしば一人でクライアント先に常駐することが多く、この環境が孤独感を増幅させる要因となります。
周囲に相談できる同僚や上司がいないため、業務上の悩みやストレスを共有できないことに耐えられず、離職を選択するエンジニアが少なくありません。
この孤独は、業務の負担が重くなるほど感じられます。
特に、スキルが十分に伴っていないSESエンジニアにとって、一人での客先常駐は大きな負担となるでしょう。
いずれにせよ、一人で客先常駐するSESエンジニアはプレッシャーが大きく、短期間での離職に繋がるリスクが高いです。
画像引用元:「ITエンジニアの労働実態調査」
SESエンジニアは、一般的にクライアント先で業務を行います。
そのため、自社のオフィスに訪れる機会は、面談などに限られるのではないでしょうか。
このような状況では、エンジニアは自社の文化や同僚との繋がりを感じにくくなり、自社に対する帰属意識が低下するのは無理もありません。
2018年に情報労連が行った「ITエンジニアの労働実態調査」でもこれが表れた結果になっています。
回答者の46.6%が「自社への帰属意識の醸成が難しい」と感じており、これはSES業界における最大離職要因の一つとされています。
参考:情報労連「ITエンジニアの労働実態調査」
SESエンジニアは、プロジェクトごとにクライアントが変わることが一般的であり、様々な環境に適応しなければなりません。
このような背景に潜む問題の1つが「人間関係」です。
案件が変われば、人間関係の再構築が必要となり、新しいチームメンバーやクライアントとの信頼関係を一から築くことが求められます。
これが頻繁に繰り返されると、環境への適応に時間がかかるエンジニアにとっては、大きなストレスとなるでしょう。
もう1つの大きな問題は、プロジェクトごとに異なるツールや技術を習得しなければならず、こちらもストレスを増大させる要因です。
IT業界は、新しい技術やツールが次々と誕生しています。
これらの変化にも適応しなければならないため、大きなプレッシャーを感じるエンジニアもいます。
さらに、一人で常駐することが多いSESエンジニアは、近くに相談できる同僚や上司もいません。
その結果、不安からストレスを感じて離職するエンジニアが多いのです。
SESエンジニアが離職する主な理由を理解できたところで、次は離職率を下げるための具体的な対策方法を考えていきましょう。
離職率を下げるための取り組みとしてSES企業ができることは、以下の8つです。
すぐに全てできなくても、できることから順に取り組んでいく姿勢が大切です。
少しずつエンジニアが安心して働ける環境が形成され、離職率は次第に下がっていくことでしょう。
SES企業が離職率を下げるためには、給与や福利厚生の改善が不可欠です。
給与は相場と比較できるため非常に分かりやすい指標であり、適切な給与を提供することでエンジニアの満足度が上がり、他社への転職を防ぐことができます。
また、各種手当や休暇制度の整備も重要です。
例えば、住宅手当や通勤手当はエンジニアの生活満足度が上がり、資格取得手当などを充実させることは、仕事に対するモチベーションを高める要因になります。
介護休暇や育児休暇など、家庭の事情に柔軟に対応できる環境を整えることも必要です。
これにより、エンジニアが仕事と家庭を両立しやすくなり、長期的な定着に繋がります。
他にも、健康診断の実施やメンタルヘルスケアの提供など、エンジニアの健康をサポートする施策も重要です。
働きやすい環境を作るためには、このような福利厚生の充実が欠かせません。
福利厚生の充実によってエンジニアが安心して働ける環境を整え、離職率の低下を図ることが可能です。
SES企業がエンジニアの離職率を下げるためには「還元率を明らかにすること」も重要です。
というのも、多くのエンジニアは、会社が自分たちの労働から得た利益をどの程度還元しているのか不透明だと感じています。
この不透明さが不信感を生み、結果として離職の原因となるのです。
そのためSES企業は、エンジニアが「自分の労働に対して正当な対価を得られている」と感じられるよう、可能な範囲で還元率を公表するのがよいでしょう。
具体的には、案件ごとの収益とエンジニアへの還元率を明示することで、透明性が上がります。
還元率の公表は非常に透明性が高く、エンジニアとの信頼関係を築くための重要な手段です。
エンジニアは「会社が自分たちの努力を正当に評価し、公正な報酬を提供している」と感じることで、企業への信頼感が増します。
これにより、エンジニアのモチベーションが向上し、離職率の低下に繋がります。
SES企業が離職率を下げるためには、明確で公正な評価制度を整えることが不可欠です。
エンジニアが「自分の働きに見合った評価と報酬を受けられていない」と感じた場合、モチベーションが低下し、離職の原因となります。
しかし、明確で公正な評価基準を作成して公表することによって、エンジニアは「この会社の評価は平等だ」と感じられ、不満の予防につながるのです。
具体的には、エンジニアの業績を評価するための明確な基準の設定です。
指標としては、プロジェクトの難易度と達成度やクライアントの満足度などが含まれます。
また、常駐先でのコミュニケーション能力や勤怠状況も考慮するべきでしょう。
このように、明確で公正な評価制度を整えることで、エンジニアのモチベーションを維持し、長期的な定着を促進することが可能です。
SES業界で起こっている大きな問題の一つは、人手不足が原因でスキルが十分でない新人を未教育のまま案件にアサインすることです。
これにより、新人は業務に適応できず疲弊し、短期離職に繋がることが多々あります。
こうした離職はさらなる人材不足を招くため、新人研修に力を入れることは離職率を下げる意味でも非常に重要です。
新人研修を効果的に行うために、エンジニアを育成する人材やノウハウが不足している企業は、ぜひ外部研修の活用も視野に入れてみてください。
さらに、多くの研修会社ではeラーニング型の研修も提供しています。
受講者は場所や時間を選ばずに学習できる上に、理解が難しい箇所は何度でも見返すことができるため、効率的に必要な知識を習得できます。
このような研修体制を整えることで、新人エンジニアはスムーズに業務に適応できるようになり、離職率を下げることが可能です。
SESエンジニアの離職率を下げるためには、エンジニアが自分の希望する案件を選べることも重要です。
会社が案件を選んでアサインさせてしまうと、エンジニアは自己成長に必要なスキルを習得できず、やりがいを感じにくくなります。
この案件を選べないことが、モチベーションの低下や離職に繋がることは珍しくありません。
そのため、エンジニアがキャリアパスに沿った案件を自ら選んで携わることでやりがいを感じ、長期的に働き続ける意欲が高まります。
一方SES企業は、エンジニアが自分の希望や興味に合った案件を選べる「案件選択制度」を導入することがおすすめです。
この制度により、エンジニアは自身のスキルやキャリア目標に適したプロジェクトに参加でき、モチベーションの向上に繋がります。
SES企業の離職率を下げるためには、エンジニアがスキルアップできる環境を整備することが効果的です。
エンジニアは新しい技術やフレームワークに高い関心を持ち学び続ける意欲が強いため、企業はエンジニアが成長できる仕組みを提供することで、定着率を上げられます。
例えば、新しいフレームワークや技術に関する勉強会や研修を、定期的に開催することも1つの方法です。
これにより、エンジニアは最新の知識や技術を学ぶ機会を得ることができます。
他には、資格取得を目指すエンジニアに対して、資格試験の費用補助を提供することもよいでしょう。
こうした支援を通じて、エンジニアは自身のキャリアを前進させるためのモチベーションを維持することができ、長期的な定着へとつながります。
エンジニアがスキルアップに関する質問や、日常的な困りごとを相談できる1on1の場を設けることも、離職率を下げるためには効果的です。
1on1はオンラインでも実施できるため、客先常駐のエンジニアでも自社に出社することなく気軽に参加できます。
これにより、SESエンジニアが上司やメンターと定期的にコミュニケーションを取る機会が生まれるため、客先での孤立感を軽減できることでしょう。
また、業務上の困難やストレスを共有し、適切なアドバイスやサポートを受けることができるため、問題の早期解決に繋がります。
このように1on1は、様々な不安を感じやすいSESエンジニアにとって非常に重要な機会であり、離職率を低下するために効果的な手段といえるのです。
SES企業が離職率を下げるためには、1on1とは別に、自社エンジニア同士が交流できる機会を増やすことも重要です。
これにより、仲間意識を醸成し、エンジニア同士の連帯感を高めることができます。
例えば、社員旅行や月に一度のイベントを開催することも1つの方法です。
エンジニアも普段の仕事とは違い、リラックスした環境で交流を深めることができます。
ただし、すべてのエンジニアが交流を必要としているわけではない点にも留意しましょう。
強制的な参加は逆にストレスを招くことがあるため、参加を強制しないことがポイントです。
エンジニアが自分のペースで交流の機会を楽しむことができるよう、柔軟な対応を心掛けてみてください。
また、オンラインでの交流会やカジュアルなミーティングもおすすめです。
リモートワークや客先常駐のエンジニアも参加しやすくすることで、全社員が一体感を持てる機会が生まれます。
このような取り組みを通じて、SESエンジニアが自社に対する帰属意識を持ち、長期的に働く意欲を高めることができるでしょう。
本記事では、SES企業における離職率の現状やその原因、そしてSES企業が実践すべき具体的な対策方法についてご紹介しました。
「SESエンジニアの離職率を下げるための取り組みはよく分かったが、何から手をつけていいか分からない…」
そんな企業担当者様は、まずSESエンジニアがスキルアップできる環境整備に取り組みましょう。
スキルアップして活躍できるエンジニアが増えれば、自ずと企業の業績は上がっていきます。
すると、還元率や給与・福利厚生などの待遇面も改善することができるのです。
自社で手が回らない場合は、ぜひ外部研修の導入をご検討ください。
弊社が提供する「ウズカレBiz」は、新人エンジニア向けのIT研修を提供しています。
様々なカリキュラムがございますが、どれも新人の即戦力化をサポートできるものばかりです。
また「人材開発支援助成金」を活用できる研修内容となっているため、企業様の導入コストも最大限削減しました。
そして、この研修を受講された方の6ヶ月以内離職率は「3%未満」と、SESエンジニアの離職率を下げる意味でもおすすめできるプログラムです。
エンジニアの離職率を少しでも下げ「活躍するエンジニアとともに成長したい!」と考えるSES企業の採用・教育担当者様は、ぜひウズカレBizの活用をご検討ください。
UZUZ COLLEGE代表取締役社長、UZUZグループ専務取締役。1986年生まれ、鹿児島出身。高校卒業後、九州大学にて機械航空工学を専攻。大学卒業後、住宅設備メーカーINAX(現・LIXIL)に入社。1年目からキッチン・洗面化粧台の商品開発に携わるも、3年目に製造部へ異動し、毎日ロボットと作業スピードを競い合う日々を送る。高校の同級生であったUZUZ創業者からの誘いと、自身のキャリアチェンジのため、「UZUZ」立ち上げに参画。第二新卒・既卒・フリーターといった20代若者への就業支援実績は累計2,000名を超える。2020年より教育研修事業を立ち上げ、2024年より「UZUZ COLLEGE」として分社化し、代表取締役社長に就任。